普段はあまり意識して外壁を見ることが少ないと思います。
しかし、ふと外壁を見るとひび割れを発見!
これは放っておいても大丈夫なのだろうか。と思っている方はいらっしゃいませんか。
また、『どうして外壁にひび割れが起きるの?』『ひび割れを発生させない方法はあるの?』『自分で直せるの?業者にお願いするべき?』といった疑問をお持ちの方もいるかと思います。
外壁にひび割れが起きる原因は大きく分類すると2つあります。それは「ヘアークラック」と「構造クラック」と呼ばれるものです。※クラックとは、ひび割れのことです。
そして、ひび割れを発生させないためには定期的な点検やメンテナンスをすることをおすすめします。
ひび割れを見つけたらまず、ひび割れがどれくらいの幅なのか、またどのようなひび割れなのかを確認しましょう。
ここで、ひび割れの幅が0.3mm未満であれば問題はなく、早急な対応も必要ありません。また、軽度なひび割れですのでご自身で補修をすることが可能です。
しかし、ひび割れが2階以上の高所にある場合や幅が1mm以上のものに関しては、業者に依頼をしましょう。
この記事では、上記のようなひび割れを見つけてしまったらまずどうしたら良いのか、ひび割れの種類や原因、それに伴うリスクと補修方法についてご説明いたします。
ご自宅のひび割れと見比べて、この記事を見て解決できればと思います。
ぜひ参考にしてみてください。


1、ひび割れの種類と発生する原因

外壁のひび割れの種類は大きく分類すると二つあります。
塗料の塗膜に発生する「ヘアークラック」と、外壁本体に発生する「構造クラック」の二種類が主なひび割れです。また、その他にも軽度な「乾燥クラック」「縁切れクラック」「開口クラック」というものがあります。
このように、ひび割れといっても塗膜に発生するものや、外壁本体に発生するひび割れなど様々ですので、経年によるものや地震などの外的要因、施工不備など発生原因は様々となります。
これらのひび割れは、それぞれどのような特徴があるのか、まずは種類と原因から詳しく解説いたします。

※補修箇所のみを最後に塗装仕上げする場合、既存の外壁カラーと全く同じ色にすることは極めて難しく、ひび割れ補修跡に沿って色ムラができてしまいます。そのため、外壁一面、もしくは全面の塗装をすることも視野に入れておきましょう。

コンクリートやモルタルの外壁に起こるひび割れの一つです。(幅0.3mm以下、深さ4mm以下のひび割れ)
発生原因としては紫外線等の影響によって、コンクリート、モルタルが乾燥し、収縮や膨張を起こすことで外壁の表面にひび割れが発生します。これは一般的には経年による塗料塗膜の劣化が考えられます。
しかし、極端に短い期間で亀裂が生じた場合は『施工時の塗料の乾燥期間が不適切』または『塗料と素地の相性が不適切』(例:下地に弾性塗料を使用し、仕上げ塗装に硬質塗料を使用した場合→下地の弾性による動きに仕上げの硬質塗料が耐えられず、表面にひび割れが生じてしまいます)であるため、施工業者による原因が考えられます。
経年劣化によるヘアークラックの場合は建物が崩れるなどといった心配は特になく、​早急に補修する必要はありません。コンクリートやモルタルの特性ですのでご安心ください。

※ヘアークラックのヘアーとは「髪の毛」を意味しており、髪の毛ほどの細いひびという意味です。

ヘアークラックは小さいひび割れなので、塗装で重ね塗りをすることで埋めてしまうことができます。ここでポイントなのが、フィラーと呼ばれる下地材をひび割れている箇所にしっかりと刷毛(はけ)で擦り込むことで、ひび割れの再発を抑制できます。
他にも補修方法が二つあり、一つ目はポンプ式の注入器を使用してひび割れ箇所にセメント接着剤を注ぎ込み、ひび割れを埋めてしまう補修方法があります。
二つ目は、電動工具でひびに沿ってV型のような溝を掘る『Vカット(Uカットとも呼ばれる)』補修方法です。コーキング剤やセメント接着剤は粒子が比較的大きいので、ひび割れ部にうまく注入できないことがあります。そこで、溝を造ることによりしっかりとひび割れ部にコーキング剤を注入接着することができます。また、Vカットは大きなひび割れにも使用される補修方法です。
他には、簡単な補修方法として、吹き付けるだけの『スプレー式被覆補修』や、微細なセメントの粉を塗布して覆う『チョーク式被覆補修』があります。この二つはDIYで補修できるので、後ほどご説明いたします。
特徴塗膜の表面に発生する髪の毛のような細いひび割れ
幅幅0.3mm以下、深さ4mm以下の微細なひび割れ原因塗膜の経年劣化により素地が膨張収縮に耐えられずに起こるもの対策外壁塗膜にチョーキング等の症状が現れたら早めに塗替えをする


➀外壁本体に発生する【構造クラック】

コンクリートやモルタルの外壁、基礎に発生する深いひび割れ。(幅0.3mm以上、深さ5mm以上のひび割れ)

▷構造クラックの原因

構造クラックは塗膜表面に起こるものとは違い、建物の構造自体が歪み、外壁内部からひび割れてしまっている状態です。
原因としては、『地盤の不動沈下や基礎の劣化』『設計ミス』『補強材(筋違い)の不足』『想定以上の地震の揺れや強風の外的要因』によるものです。このような原因で建物に負荷がかかり、躯体が傾くことで構造クラックが発生します。
構造クラックが危険と言われる理由は、発生原因が外壁表面ではなく、建物の構造自体に起きているケースが多いためです。
構造クラックを発見した場合は、早急な点検をして補修をする必要があります。また、場合によっては建物の強度計算と施工時の工法の確認が必要となります。

▷構造クラックの補修方法

構造クラックはひび割れが深いため、塗装で表面処理をしても意味がありません。割れを防ぐためには、ひび割れ内部にシーリング剤(コーキング剤)をしっかりと充填させることが効果的な補修方法です。
それでは、詳しい補修方法をご説明いたします。

【カットシーリング工法】

使用工具:電動工具→ダイヤモンドホイール(目地切りカッター)
電動工具を使用し、ひび割れ部分をVカットまたはUカットにします。そして汚れを除去したあとに内部をプライマーなどの下塗り材で下地処理し、その上からシーリング剤(コーキング剤)を注入する方法です。V字やU字にカットをすることでひび割れ内部の凹凸が均一になり、下塗り剤やシーリング剤が密着しやすくなります。

※ひび割れ補修に使用するシーリング剤は、ウレタン系や変性シリコン系の、上から塗装可能なものを使用しましょう。ホームセンター等で安く手に入るポリサルファイド系等のシーリング剤を使うと、上から塗装しても塗料が載らないので注意が必要です。シーリングの注入後は、通常の外壁塗装用の塗料で表面の仕上げ塗りをして補修完了となります。

 

▷構造クラックまとめ

特徴建物の構造体に影響を及ぼす可能性がある深いひび割れ

幅幅0.3mm以上、深さ5mm以上原因不動沈下や設計ミス、地震などの外的要因により建物が傾くことで発生対策少しでも怪しいひび割れがあったら業者に見てもらう


➁その他のクラック
▷乾燥クラック

  • 特徴:クラック幅が極めて狭く、間近で見ないと確認できないほどのひび割れ。
  • 発生原因:湿式工法を用いたモルタルの外壁に多く見られる現象。塗料を乾燥させる過程で壁材の水分が蒸発し、乾燥と収縮を繰り返すことでひび割れが発生してしまう。但し、乾燥クラックは塗膜表面のみに現れるクラックなので、完全に乾燥してしまえばクラックが広がることはない。
  • 対策:外壁塗装の下塗りに「微弾性フィラー」を使用し、上塗り(仕上げ塗り)に弾性塗料を使用することで、乾燥伸縮に強くひび割れのしにくい外壁になる。

 

▷​縁切れクラック

  • 特徴:「前に塗った箇所」と「後から塗る箇所」の塗料同士の繋ぎ目部分にひび割れが発生する。
  • 発生原因:湿式工法を用いたモルタルの外壁に多く見られる現象。塗装工事が何かの影響で中断され、時間が経過しまうと塗料の乾燥具合に差が出てしまい、ひび割れの発生となる。
  • 対策:外壁塗装を行う職人が注意していれば防ぐことが可能。基本的には構造クラックに準じ、サンダーカット等を使用し、コーキング(シーリング)を用いて補修する。ひび割れ幅0.3mm未満の場合はフィラー(シーラー)の下塗り処理で補修する。

 

▷​開口クラック

  • 特徴:窓枠や扉などの開口部周辺に発生し、開口端部から斜め方向に亀裂が入る。
  • 発生原因:上下左右に力がかかりやすい場所のため、建物が受ける揺れやゆがみで外壁がずれてしまい、開口端部から亀裂が始まる。※完全に原因を取り除くのは難しい。
  • 対策:雨水が通りやすい場所であり、放置するとクラックから外壁内部に水が染み込む原因となってしまうので、業者に相談し早急な対応が必要。開口部の造りによって対処方が異なる。

2、ひび割れが発生する原因とは

住宅の外壁にひび割れが発生する原因は下記となります。

➀外壁の経年劣化

外壁は時間の経過とともに劣化していきます。
劣化が進むと外壁表面にひび割れが生じてしまうことがあります。
また、外壁塗装メンテナンスをしてから数年後にひび割れが発生した場合は、経年劣化による原因の可能性が高いといえます。
外壁表面に発生しているひび割れの多くが、上記の経年劣化が原因となります。
※外壁部におけるシーリングについても、経年劣化が原因でひび割れが発生します。

➁外壁塗装工事の施工不良

外壁塗装工事で施工不良があった(塗装業者による施工内容の不備及び手抜き)場合にも、ひび割れが発生することがあります。
外壁塗装工事が完了した後、数ヶ月でひび割れが発生した場合は施工不良の可能性を疑いましょう。
塗装をしてから数ヶ月でひび割れを起こすことは基本的にはありません。
施工不良によるひび割れ発生例は下記の通りです。

【施工不良の例】
▷乾燥不足

一般的な外壁塗装の工程は『下塗り⇨(乾燥時間)中塗り⇒(乾燥時間)⇒仕上げ塗り』となります。
上記工程の通り、下塗り、中塗りの後には、塗料を乾燥させるために乾燥時間を必要とします。

※乾燥時間の規定は各塗料メーカー製品ごとに異なります。

この乾燥時間が重要となります。
下塗りと中塗りがしっかり乾燥しないまま次の工程へと進めてしまうことで、ひび割れの原因となってしまうことがあります。

▷塗料の選択ミス

塗料を選ぶ際には注意すべきことが2つあります。
・元の外壁材(下地)と、下塗り塗料の相性
・下塗り塗料と、中塗り・仕上げ塗り塗料の相性(基本的には中塗りと仕上げ塗り塗料は、同じ製品の塗料を使用します。)
施工する塗装業者が相性を考えず塗料を選んでしまうと、塗装のひび割れや塗膜の膨れ、剥がれなどの不具合となってしまうことがあります。

➂地震による揺れ

地震が発生した際による揺れが原因となり、外壁にひび割れが発生することも多々あります。この場合は、表層の外壁塗装だけではなく、外壁材や重要な構造体にまでひび割れが生じている可能性もあります。

➃大きい車や電車による振動

トラックや電車などが近くを通過する際には、少なからず振動が発生しています。この振動が地面を伝い、お住まいに振動を与えています。
それにより、外壁にひび割れが発生してしまうことが稀にあります。
特に大きな道路沿いや線路の近くに住まわれている方は、お住まいが頻繁に振動を受け続けているため、外壁のひび割れが発生しやすい傾向にあります。


3、ひび割れがもたらす6つのリスク

ひび割れの原因や種類についてご紹介してきましたが、外壁にひび割れが入ることによりどんなリスクが発生するのかをご紹介いたします。
➀雨漏りに繋がる
ひび割れている場所から雨水が浸入してしまいます。はじめは室内への影響はありませんが、水を含んでいる状態が続くと室内の雨漏りに繋がってしまう可能性があります。
➁建物自体の耐久性が減少する
ひび割れを放置していると建物の劣化が進行し、サイディングやモルタルの下地(木部)が腐食してしまいます。最悪の場合、外壁材を取り替える工事が必要になります。
➂湿気によるカビの発生で健康被害を引き起こす
ひび割れから雨水が浸入するとカビが発生しやすい環境になります。カビが繁殖した場所に暮らしていると、空気中のカビ菌が体内に入り込み、感染症、アレルギー、中毒などで、場合によっては命の危険に陥ることもあります。
➃湿気によるシロアリの発生
ひび割れから浸入した雨水は外壁内部の構造体にも浸透し、シロアリ等が発生しやすい環境にしてしまう恐れがあります。シロアリは建物の弱体化を招き、倒壊のリスクを高めてしまいます。
➄美観性の低下
外壁にひび割れがあると、建物が古びた印象になってしまいます。


4、ひび割れ補修の手順

ここでは、外壁ひび割れ補修の工法と手順について詳しく説明いたします。

➀業者が補修をする場合
Uカットシール工法

Uカットシール工法とは、クラック幅が0.3mm以上の場合に使われる工法です。
写真の電動工具で補修箇所を整えることで、ひび割れの再発防止が期待できます。
手順は以下となります。
【1.クラック部分をU字にカット】

  • 電動カッターなどでひび割れに沿ってU字にひび割れ部分をカット。その後、カットした箇所を刷毛などで掃除して綺麗にする。​

【2.プライマー塗布】

  • U字にカットしたひび割れ部分にプライマーを塗布する。

【3.シーリング材を充填】

  • プライマーが乾燥した後、シーリング材を充填する。※ひび割れ再発防止のため、丁寧にシーリング材を充填する必要がある。

【4.塗装】
最後に塗装仕上げ。補修箇所が多い場合は外壁を全塗装する場合もある。

➁自分で補修をする場合

自分でひび割れを補修する場合は、以下の手順に沿って行ってください。
①.ひび割れ部分の外壁を洗浄し、綺麗にする

②.ひび割れ部の周辺をマスキングテープで保護する

③.ひび割れ箇所にプライマーを塗布する

④.ひび割れ部にシーリング材を塗る

⑤.ヘラなどでシーリング材を成形して乾燥させる

⑥.マスキングテープを剥がす

⑦.ひび割れ補修箇所を仕上げ塗装する

この手順に沿っていくことで、外壁のひび割れを補修できます。


5、知らないと損!?
保険・保証制度について

建物を購入した時や外壁リフォーム、塗替えをした場合に、工務店や塗装の施工会社から保証書を受け取りましたか?ほとんどの場合、「○○年間の保証がついています」という説明があったと思います。まず最初に、保証内容を確認してください。条件によっては、施行業者が補修を請け負ってくれる可能性があります。

➀塗装業者や塗料メーカーの保証

外壁塗装リフォームの施工は、塗料のメーカーや施工業者などの保証が基本的にはついています。
しかし、施工業者の保証は外壁のひび割れに対しては経年劣化と判断されて保証されないという場合があります。ご自身で保証書の記載事項をよく確認してみてください。
また、塗料メーカーによる保証は塗料に対する製品の保証となっており、施行した外壁の塗装に対しての保証ではありませんので、こちらも保証されないケースが多いです。
※上記2つは主に、保証の対象が「施工上のミス」や「作業の手抜き」についての保証となっている場合が多いです。

➁火災保険による保証

火災保険による保証内容としては、「突発的に起きた自然災害」に対するものです。例えば、台風による自然災害でひび割れが発生した場合などは保証されます。しかし、外壁の塗装におけるひび割れは経年劣化と判断されることが多く、保証されませんのでご注意ください。
※最近の火災保険は小額な補修工事でも保証されますが、昔の火災保険ですと補修金額が20万円以上の場合となりますので、ご自身が加盟している保険内容を確認してください。
また、申請が可能な期間は、自然災害によって外壁が破損してから3年以内ですので注意してください。


6、まとめ

ひび割れ(クラック)は、一見とても小さな劣化のように見えますが、長い期間放置してしまうと、外壁全ての交換や、基礎などの全面的な補強工事に繋がってしまう非常に危険な存在です。
「ヘアークラック」や「構造クラック」など、ひび割れの種類で深刻さは異なりますが「このくらいの割れなら大丈夫」と思って自分で済ませようとすると、お住まいに起きている重大な劣化を見落としてしまうこともあります。不安があった場合は、信頼できる業者に一度みてもらうことをおすすめします。
また、外壁のひび割れは、飛び込み訪問の業者が目を付けるポイントです。
いきなりインターホンを押し、「お宅の外壁にひび割れが起きています。放って置くと大変な事になりますよ。」というセールストークで話を進めてきます。
言っている事は間違っていませんが、外壁ひび割れの補修はしっかりと補修して直すことに意味があります。飛び込みの訪問業者では技量が追いつかない場合が大半ですので、どこの業者かわからない場合には依頼しない方が無難です。
以上が本記事のまとめとなります。本記事が皆様の役立つ情報の材料となれば幸いです。


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